ミアの小話

凧揚げをしていたら桜の木に凧がひっかかってしまった。
僕は傍らにいた友人である猫のミアに「ごめん、あの凧取って来て。今度マタタビカニカマを奢るからさ」と頼みごとをした。
彼はやれやれという顔をすると、あっという間にスルリと木に登り、いとも簡単に凧を下に落としてくれた。さすが我が師匠、高いところに登らせたら天下一品だ。などと感心していると、ピョンと木の中腹から飛び降りた彼は、僕が地面に置いた布カバンの上でゴロゴロと喉を鳴らしながら、こっちに「ニャー」と一鳴き。
僕は気をとりなおし取ってもらった凧を穏やかな風に乗せ、再び空高く揚げた。
ふと横を見ると彼は凧を見上げ、満足そうにうなずくと静かに丸くなって寝てしまった。まったくたいしたもんだなとひとりごちた。